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三浦綾子さんの『母』を読み終わり、じーんと沁みてくる余韻の中にいる。 『蟹工船』の著者、小林多喜二の母、セキの物語だ。愛する我が子を拷問死させられた母の深い悲しみ、そして息子の生き様から掬い上げていく自分自身の生き方と静かな平安が、セキの秋田弁交じりの語り口調で綴られていく。 三浦綾子さん晩年の、祈りのこもった秀作で、現代の日本にも警鐘を鳴らす。 名も学もない小さな母の中から、海よりも深く豊かな愛情が伝わってきて、涙がとまらなかった。小さな池しかない私だが、少しでも、セキさんの海に近づきたい。

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